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南船場を歩こう




そもそもなぜこんなビルを建てようと思ったのか、まずはその経緯について聞いてみた。
高野:「オーガニックビルのオーナーは小倉屋山本という昆布の“えびすめ”の製造販売でしられる老舗会社です。

その小倉屋山本が本社ビルを建替える事になり、山本社長(当時専務)が、「どうせならおもろい物を作ろう」という事で、私ども(ユ−デ−コンサルタンツ)にご相談をいただきました。

そして当社が設計・監理を担当させていただくことになったんですが、まず「おもろい物」ということで、どんなビルを建てようかと考えた時に、やはり小倉屋山本の企業理念である「自然との共生」を尊重し、その考えを形にしようということになりました。
昆布は海で育った物ですからね、その天然の食材から、自然を大事に分かちあって生きていこうという考えなんですね。

そこでデザイナーを探し求めているとニューヨーク在中のベネッツアのアーティスト「ガエタノ・ペッシェ」に出会いました、我々のコンセプトに非常に興味を持ってくれて、快く引き受けてくれました。そして見事にその思いを基本デザインで表現してくれました。またオーガニックの特徴である壁面の植栽は(株)イージーさんにお願いしました。」

オーガニックビルは今でこそ聞き慣れた言葉になっているが、まさに「コラボレーション」により生まれたわけだ、しかもその原点には「おもろい物を作りたい」という共通の思いがあった。



続いて柔軟な発想と豊かな自然を尊重する企業理念、面白い物を作ろうという思い、
それらが融合して生まれたオーガニックビルの特徴でもある色と植物について聞いてみた。
高野:「ガエタノ・ペッシェの発想で、ビルをテラコッタの色(素焼き色)にし、壁面には植物というふうに自然にこだわりました。

そして植物も全部種類を変えて楽しみたかったんですよ。
あの外壁には132個のポット(植木鉢)があり、その中にある植物は132本とも全部種類が違うんですよ。また窓にしても斜めの窓や楕円形の窓があって有機的なデザインになってるんです。

イージーさんが植物を担当していましたが、アフリカの砂漠から「すすき」をもってきたり、やしの木はアメリカからもってきたりと、色々と苦労も多かったみたいですが植栽が出来上がるのを見ていると非常におもしろかったですよ。」




今の南船場ではオシャレなカフェやブティックが建ち並び、まったく違和感なくオーガニックビルは溶け込んでいるように思いますが、10年前にあの斬新なデザインは小倉屋山本さんや周囲から反対や抵抗はなかったですか?
高野:「そうですね、10年前の南船場ってオフィスビルと喫茶店と欄間屋(笑)ぐらいで、今のような雰囲気じゃなかったですから、みんな驚きましたね。

ガエタノ・ペッシェの提案を受けてから、山本社長も何度も相談に来られましたし、我々の社内でも悩んだぐらいです。でもけったいなビルやなあと思いながら、やっぱりおもろいものを作りたかった。

アーティストのガエタノが有機的なデザインを起こし、我々が製図から模型を作っていくうちに、これはいけるという自信につながっていきました。山本社長も常に新しいものにチャレンジしたいという意向でおもしろいものを望んでいたので違和感はなくなっていきましたね。

完成した時もわりとすんなりと皆さんが受け入れてくれましたね。やっぱり楽しんで作ったし、ほんまにおもろい物を作ろうと思ったので、逆に仕掛けを入れて、計算してターゲット決めて作らなかったのがよかったかなと思いました。そのあとは噂を聞きつけてデザイン事務所などがオーガニックビルに入居してきました。」

なるほど。小倉屋山本といえば昆布製造で150年の歴史を持つ老舗中の老舗だが、そうなると老舗=堅い、頑固という固定概念がちらついてしまう。
しかし実際はそうでなく常に新しい事にチャレンジし、かなりユニークで柔軟な発想があったようで、実はこれは150年前山本の先代、山本利家も常に新しい事にチャレンジする方だったらしいです。どこかで意識の高さや気持ちの豊かさなど、伝統がひきつがれているのだと思いました。



それにしても気になるのが132種類の植物、手入れは大変じゃないですか?
高野:「もともと草って生命力が強いんですね、オーガニックビルは立地上西向で、ビルの反射熱なんかすごいんですが、枯れずに生きているんですね、植物って与えられた環境の中で精一杯生きようとするんですね。

はじめはやはり何年か経つと枯れてしまうのではないかと思っていたんで、時間がたって、生き存えている姿を見たとき、驚きと感動がありました。
それとサポート態勢が万全でしたね。オーガニックビルには最上階にオーナーの小倉屋山本さんがいて、我々の会社も、またイージーさんもビルに入居していましたから、何かあればすぐにサポートできました。
植木鉢に水をやるのも自動給水器がついていますし当時かなり注目を集めました。「制御装置付自動給水器はすごいですね」といろんな所から問い合わせはきましたよ。実はそんなに難しい装置じゃなかったんですけどね(笑)。でもまあ僕らは毎日植物をみてましたから、手入れも手伝っていましたよ。ですから他のビルよりも愛着がかなりありましたね。関係者が団結したサポート態勢により維持できていると思いますよ。」



それではオーガニックビルに対する思い入れはかなり大きかったのでしょうね。



高野:「企画から完成まで3〜4年かかっていますし、またその後我々も入居していましたしね。オーガニックビルを作る前から楽しかったし、作った後も楽しかったですね。

小倉屋山本の理念と山本社長のユニークさ、ガエタノのデザイン、イージーさんの植栽と我々の設計、自由な発想と何よりもみんなが「おもろい物作ろう」とした考えがすべてぴったり当てはまった。

その気持ちが作品に変わっていきました。植物が132本、全部種類が違うと言いましたが、このオーガニック自体を植物に例えていますからね。それぞれの特性をもった個々が有機的に結びつき、集合体となって力を発揮していき、ビル全体を構築している姿を表現しているのです。このことは街についても同じことが言えるのかもしれませんね。

キイキしている街は様々な世代の人々が暮らし、活動しているものです。例えば街が若者だけの住処になってしまい、街の様相が単一化してしまうと、流行りがある時はいいんですが、やがて勢いがなくなると街も廃れていってしまって、復活するエネルギ−がなくなってしまうものです。

その意味でも現在、この南船場はいろいろな人たちが混在しながら生活していますので、さらに魅力のある街になっていくのではないでしょうか。そんな街にこそオーガニックビルはよく似合うと思いますし、存在の意義があるのだととも思います。

オーガニックビルはぼくの青春の1ページですし、相当の思い入れがあります。ビルも街と共に末永く共存していってほしいですね。」




今や南船場のランドマーク的存在となった「オーガニックビル」。

誕生には関わった人々の「おもろい物を作ろう」という熱く真摯な思いが形になったという物語があった、その発想こそが今の南船場を形成している原点かもしれない。

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